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声が部屋の入り口辺りから聞こえた。勝ち気そうな少女の声だ。そして教皇である男にとっても、よく知る声だ。
「……ちょうど呼ぼうと思っていたところだ」
その言葉に少女の声が露骨に苦味を滲ませる。
「まさか……私にはるばる日本へ行け、ってか? 確かにあそこはそこそこ過ごしやすい国だけどさー、タダイが滞在中ってんなら勘弁してもらいたいんだけど?」
「相変わらず察しがいいな」
「マジかよ……うー、私は行かないぞー! 行かないったら行かないからなー! 観光ならロンドンとかニューヨークとか……あーパリもいいかも――」
「神の御名の下において、バチカン市国教皇として十二使徒第4使に命ずる。至急日本へ発ち、《タダイ》の任務補助、もしくは任務の引き継ぎを遂行せよ。任務を引き継ぐ場合、多少のやむを得ない暴力は認可する」
男の決然たる物言いに、アンデレと呼ばれた少女も黙り込む。コツッ、コツッ、と足音が響き、暗がりにいた少女は蝋燭の仄かな明かりに照らし出された。
セミロングの髪は薄い金髪、所謂シルバーブロンドだ。瞳の色は深緑で、年齢は高校生くらいだろう。何より特徴的なのは、着用している修道服のような衣装で、色とりどりのシールやステッカーがぺたぺたと無秩序に貼り付けられていて、一種のカオスの様を呈している。
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