それはまだ始まる前の事

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彼女はその綺麗なグリーンの瞳を訝しげに細めながら、堅い表情を崩さないままの男に疑問を呈する。 「……他の奴じゃダメなのかよ。《ヤコブ》はどうしてんだ? あの大量非殺戮兵器の方がこういう波風立てちゃいけない任務には合ってるんじゃねーのか?」 「その認識は些か間違っている。既に我々とSELNは波風が立っている状態なのだ。多少の衝突は避けられん。ましてや仲間とも闘わなければならない可能性もある。故に、この任務には冷静な状況分析と高い戦闘センス、そして自分の心を切り離して自由に残酷になれるような素質がなければならない。《ヤコブ》は確かに強いし信頼出来るが、あの子の性格にはこういう任務は多少キツイかもしれん」 「……私をそこまで買ってくれるのは嬉しいが、そんなら他にも適任が――」 「《ヨハネ》は今日も世界のどこかを呑気にブラブラして音信不通……まあアイツは死にはせんが……。《シモン》は性格に非がある。あれでは事態を悪化させるだけだ。《マタイ》は冷静なようで案外情に流されやすい。私、《ペトロ》に関してはご存知の通り教皇としての責務がある」
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