66人が本棚に入れています
本棚に追加
今度こそ、完璧に沈黙。
少しの間、少女は頬を膨らませて不服を現していたが、思いっきり『ハア~~……』とため息を吐き出し、不承不承といった感じに頷いた。
「あーあー、わかったよ。恩人にそこまで言われちゃあ仕方ない。それに《タダイ》だけに任せるってのも不安だしな。ついでだから本場の寿司をたっぷり堪能して来るよ」
「……経費には入れんぞ」
「えー!? ケチじぃだなー!」
「なんとでも言いたまえ。……それともう一つ、コイツを持って行くといい。必要になる場合もあるかもしれん」
そう付け加えて教皇が指差したのは部屋の脇にある小さな円形のテーブルに置かれた、黒いオブジェクトだった。
その形は人間の脚に似ているが、膝から臑に当たるであろう部位は黒い滑らかな板の様な物体があてがわれている。人間用の義足にしては歪な形状である。
それを一瞥して、アンデレは軽い調子で笑った。
「へぇ、宣教師の真似事かぁ。イエズスのザビエルを思い出すなぁ。しかし、そこまでの必要性は感じねーけど? それとも、私一人じゃ不安だったりするワケ?」
「この程度で君の心配をしたりはしない。そう簡単にくたばってもらっては困るしな。万が一の為だ。一応持っていろ」
最初のコメントを投稿しよう!