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十二月も下旬。街中は綺麗なイルミネーションをところ狭しと飾り付け、毎年夜空を走り回り不法侵入を繰り返す、はた迷惑なおっさんを讃える陽気な曲を流し始める。
すると、どっから湧いたのか知らないが街中を徘徊し始めるカップル達。
まったく人前でイチャイチャと……死ねばいいのにと何度思ったことか。
どうせクリスマス当日は見栄はったプレゼント用意して、その盛り上がった勢いでゴールデンのお茶の間を凍らせる合体を繰り広げるんだろ……羨ましいとか思ったり思わなかったり。
おっと、そんなことより今はもっと大事な用があるんだった。
寒さで丸くなった背中を少し伸ばして、ごった返す人並を足早にすり抜け、俺は街外れの公園に到着した。
誰かいないか辺りを見渡し、いないことがわかるとホッと胸を撫で下ろしてブランコに腰を掛ける。
次いで、ポケットから携帯を取り出し時間を確認する。
「一七時前か、約束の時間まであと少しか……告白成功するかな……」
緊張してきたせいか、胃がぎゅっと掴まれたように痛くなってきた。
……落ちつけ……落ちつけ桐島楓、相手は中学の頃から知ってるんだ。たかが頭脳明晰、容姿端麗、運動神経抜群なだけじゃないか。
そう、初恋の人で、ただの高嶺の花ってだけ。
ーーちょっと待て。俺は負け戦をしに来たみたいに感じるのはなぜだろう。
まあいい、一代決心をして彼女を呼んだんだ。男なら当たって砕けろの精神で告ってやるぜーーって、砕けたら意味ねえな。
「と、とにかく頑張らないとな。つーか、オーケーしてくれたら彼女か……でへへ」
俺はブランコを漕ぎながら、ぐるぐると頭の中で最高の、そりゃもう最高のシュミレーションを開始させた。
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