~change・1~ 苦悩の始まりは突然に

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  ーー数十分後、俺は否応なしに現実に引き戻された。 「……うぅ、さぶい……さぶすぎる……」 不意に通り抜ける風が肌を刺すように冷たくて、思わず身を縮めた。マフラーから少しだけ口をのぞかせて、かじかむ手に息を掛けながら擦り合わせる。 吐いた息が白い霧みたいになって宙を舞う。それを追うように空を見上げていると、公園の中に入ってくる足音が一つ、耳に届いた。 確認しようと顔を戻した瞬間ーー。 ドクンと心臓が跳ね上がり息を飲んだ。 肩に掛かる薄茶色の髪、夕日の光を浴びて輝くは黒真珠のような双眸。この寒さも忘れさせてくれる程の暖かい笑顔。 足音の主は……俺が待ち望んでいた初恋の人『西村彩音(にしむら あやね)』だ。 西村は俺を視認すると、鞄を片手で前に持ち、空いた手を控えめに振りながら、ゆっくりとこっちに歩いて来る。 「遅れちゃってごめんね。けっこう待たせちゃったかな?」 小首を傾げ訊いてくる姿は可愛すぎた。 「よ、よう西村。全然待ってない。つーか、俺も今来たとこみたいな? あははは」 ……ヤベェ、声が上擦った。 「うふふ、その割には待ちくたびれた顔してるよ」 「いやいや、マジで待ってねえよ。それに待ったとしても、こんな寒さなんて屁でもねーし、寧ろ暑いくらいだぜ」 言って、分厚いコートでわかんないが、力こぶを作って見せる。 西村は「さすが空手習ってるだけあるね」と返してくれたが、実際寒すぎて震えてましたなんて口が裂けても言えない。 そんな感じで、多少会話が温まってきたところで西村が一歩俺に近づくと、 「それで桐島君、私に伝えたいことって何かな?」 「っーーーー」 その言葉に息が詰まり、心臓がより一層早く脈を打った。 ゴクリと喉を鳴らす俺。 ーーつ、ついに本題がきた。
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