天を掴めば

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 正広が消えてしまった。  その事だけで頭の中が一杯になる。  どうしたらいい?  正広ならどうする?  正広を真似て天に手を伸ばして何かを掴もうとする。当然何も掴めたりはしない。  正広はあの時どうして僕にあんな話をしたのだろう。  ふと、なぜ僕だけが正広の事を忘れないのだろうと思った。  正広に近しい人間だからだろうか。  それは何だか違う気がした。きっと正広の事をよく考えていたからだ。  それは何故だ?  頭の中で何かが繋がった気がした。  天に掲げた手のひらをゆっくり握る。  僕はそうするだけでいいんだ。  そうすれば。  僕は正広を掴んでいられる。
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