00.淡桃クラブハイ

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私立縁柏高校(えんがしわこうこう)SF部、部室前。 こうして、僕がSF部の部室前で何分も悩んでいる理由について詳しく語るつもりはないが、しかし、恐らく此処で僕が語らなければ物語が進まない不測の事態に陥るであろうから、語らなければならない。 全てを。 頭から、尻尾までを。 黒から、白までを。 SF部に入部したい、理由については此れで十分通用するのだが、しかし問題はここからなのだ。 先ず説明しなければならないのだが、私立縁柏高校SF部の噂はこの学校に限らず、甚だしい範囲に広がりつつある。 勿論悪い意味でなのだが、そのお陰で、なのだろう。三年連続で入部生がゼロという縁柏高校史上前代未聞のワースト記録を残したらしい。 もう少し簡潔に言うとすれば、今の一年生が三年生になるまで、入部生が一人も来ない事態だ。 無論、廃部に追い込まれる一方だったのだが、そのSF部が部紹介の日から僅か3日で窮地を脱したと、これもまた甚だしい規模で噂が広がった。 SF部の窮地を救ったのは一人の一年女生徒らしく、その艶かしい美貌による成果だという。 所詮噂、なのだが、ならば何故それほどまでの美女がよりによって、SF部に入部したのだろう。そして、一番問題的な点である。 SF部。 この高校においては断言できる。 皆が口を揃えて、 「あの部活の名を口にするな! 呪われる!」 とまで言われるのだ。某闇の魔術師のような、相当恐ろしい「噂」が出回っているに違いない。例のあの人、のように例のあの部活、と呼ばれているに違いない。うん、きっとそうだ。 斯くして、理由に加え、数ある疑問と噂を確認すべくこの禍々しい入口の前で固まっているわけだ。
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