00.淡桃クラブハイ

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悩んでいるのは、此処まで来た経緯が自分の意思ではないからだ。 じゃんけん。 恐ろしい勝負である。 そのルールは無論日本全国周知のこと、世界共通だ。 多分に、「ピカチュウ」並みかそれ以上だろう。 僕はその勝負に負けたのだ。 男らしくグーで。 負けには当然と言えば当然、ペナルティがあって、その勝負に負ければ「例のあの部活」に入部して噂を確かめる、という至極質の悪い勝負だった。きっかけは友達の好奇心だ。 そして僕は負けたのだ。 グーで! かっこよく! そこで覚悟を決めて此処まで来たものの、あの恐ろしい噂とこの禍々しい入口を前にすれば、ノブを引く手が重いのも頷ける。 最早この部活は心霊現象と変わり無い。恐怖心を底から呼び起こすのだ。 あぁ、なんて恐ろしいんだ。 遥か僕の後方から見守る数少ない友達の視線を背中に感じる。 汗が流れるのも感じる。 春なのに晴れ晴れしない。 気分が悪い。吐きそうだ。 ごくん、と唾をのみつつ、今度こそ覚悟を決めてドアノブに手を伸ばした。 僕はこの部活が普通だと証明して、あわよくば噂の美少女とウハウハしてやるんだ! 部員が美少女だけなら二人っきりだ!これで僕は早々童貞を卒業できる! いかんいかん。こんな時に何を考えているんだ僕は。そんな事考えているのがばれたら、確実に友達が減る。 いや、大丈夫さ! どうせ数えられる数の友達が数えられる数だけいなくなるだけだ。 ノブまであと数センチ。 周りの音が何も聞こえなくなる。 そして、僕は汗ばむ手でドアノブを強く握りしめた。 そこで僕の記憶は飛んだ。
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