00.淡桃クラブハイ

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「おはよう、早速解剖させてもらうわね!」 目覚め際に何か違和感だ。 待てよ、一度確認だ。――おはようって只の朝の挨拶だよな、じゃあおかしいのはやはり、解剖の部分か。 いや、解剖って本当に解剖するやつがいるか。こんな所で初対面の人間の人体にメスを入れる馬鹿が、この21世紀にあり得るはずがない。 どうやら、比喩的な意味で使ったんだろう。そう、僕の事を聞いて知りたいと、そういう意味だな。 なら答えはyesだ。 存分に切り開いてくれ。 「じゃあいくわね! うぅー、武者震いで手が震えてるわ!」 徐に少女はメスを取り出す。 何か塗っているようだ。――あぁ、消毒用のオキシドールか。 「いや待て! 文字通り解剖する気か!」 「何でよ。貴方が、なら答えはyesだ、とか言うからよ。意味不明だったけどyesなら問題ないでしょ? あれ? yesって否定だったかしら、肯定よね?」 「しょ…正真正銘の馬鹿だ…」 「ばっ…! 馬鹿とは失礼な! 私は馬面でも鹿面でも、ましてや馬鹿面(うましかづら)でもないわよ!」 21世紀に生まれた人なのか疑わしい頭脳だ。 「正真正銘のバカだ!」 「貴方、切り刻まれたいの?」 少女が不意に、殺意を感じさせる不気味な笑顔に変わる。どうやら、カタカナは通じたらしい。 馬鹿の概念は有るようだ。 「あ…あの、聞きたいこと沢山あるんっすけど。――先ず、そのメスを下ろしてくれないかな」 「降り下ろせばいいのね」 「こんな所で女子にメスを降り下ろされて血みどろちんがいに!!」 「五月蝿いわね。――卸せばいいんでしょ 」 「鬼畜すぎる! 僕は何処に売られるんだ!」 「蛸部屋よ」 「至極残虐行為極まりねぇ!!」
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