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思わず声を荒らげてしまった事に気づいて、周りを見回す。
静かだった。
不気味なほどに。
放課後だってのに、運動部の威勢さえ聞こえない。
「冗談よ。部室で話しましょ!」
少女は何事も無かったように刃物を片付けると、僕に向き直りながら続ける。
「因みに、さっきのは全部嘘だからね。私、あんな馬鹿じゃないから」
「何で馬鹿を演じる必要があるんだよ」
という僕の問いに澹々(たんたん)と悪ふざけよ、と答えると、少女は部室のドアに向き直った。
今のところ信憑性は無い。多分に、少女は本当に馬鹿じゃないのか。今のは強がりじゃないか。
そんな事を考えているのが気づかれたのか、少女が急にまた僕に向き直る。
一瞬ビクついてしまった。
「欲情しないでよね。私、この部活で紅一点だから」
「知ってるよ。学校じゃいい噂なんだ」
あらそう、とこれまた澹々と切り返される。然程気にしているようにも見えなかった。
それと、と少女は続ける。
「貴方が気絶した理由、これよ」
少女が指差したのは、さっき僕が握りしめたドアノブ。
「パスワードを言う前にノブに触れると、自動的に電流が流れるようになってるの。気絶する程度よ」
股間辺りがムズムズした。
「ゾンビ万歳!!」
不意に目の前で少女が叫ぶ。流石に驚かずにはいられない。
「なんだよ!」
「パスワード、覚えといてね」
とだけいって、少女はドアノブに手を延ばした。
反射的に止めようとしたのだが、何事もないようにドアは開かれた。
「SF部へ、ようこそ!」
少女は無垢な笑みで僕を部室へ迎え入れた。
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