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「・・・って言ったって、ヤンバルクイナじゃなあ・・・近距離を移動する訳じゃないんだし、行くのは海の向こうの向こうの向こうの向こうの向こうの向こうの向こうの向こうのずーーーーーーーーーっと向こうだぜ!どういくんだよ!」
イリオモテヤマネコのナゴは、半ば呆れ顔で言った。
「うーーーーん・・・どうしようかな・・・」
「おいヤンバルクイナ!自分で行っておいて、『どうしようかな』は無いんじゃないの?自分の発言に責任持てよ・・・!」
イリオモテヤマネコのナゴは、ヤンバルクイナのヨナクを鋭く睨み付けた。
「は・・・はい!!ご、ごめんなさい!!」
「だから、『ごめん』はいいから責任・・・」「あっ!いいこと思い付いた!!」
突然、アマミノクロウサギのセンカが突拍子もない声をあげた。
「いいことってなんだよ?」
イリオモテヤマネコのナゴはセンカに聞いた。
「それはね、ふふーん。“あまんちゅ”の実を使って、ヤンバルクイナさんを空に飛ばすの。」
「このヤンバルクイナが、“あまんちゅ”の実を食べれば、空を翔べるのだな!?」
「うーーーーん。食べるというか、付けるかな?空を翔べるというか、浮くというかな?ちょっと待ってて!今、持ってくるから!」
「はあ?」
ぴょーん!たったったった・・・
「おい、聞いたかよヤンバルクイナよ、お前翔べるってよ!あのアマミノクロウサギに感謝しな!」
イリオモテヤマネコのナゴは、ヤンバルクイナのヨナクにひそひそと耳打ちした。
たったったった・・・
アマミノクロウサギのセンカが戻ってきた。
「みーんなー!お待たせー!」
「ねえ、アマミノクロウサギよ。」「なあに?」
「この“あまんちゅ”の実ってさあ・・・」「んん?」
「どうみても・・・」
「どうみても?」
「俺が見ると、」
「見ると?ふふーん。」
「ふ・・・ふ・・・ふう、ふう、風船じゃね?」
イリオモテヤマネコのナゴの顔は、みるみるうちに引きつってきた。
「ふ・う・せ・ん?」
アマミノクロウサギのセンカは首をかしげた。
「そう。これ、風船でしょ?ゴム風船。」
イリオモテヤマネコのナゴは、もう汗だくだ。
「ふうせん・・・そうとも言うねぇ。」
アマミノクロウサギの前肢には、カラフルなヘリウムガスで膨らんだ風船の束が結ばれていた。
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