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エピローグ 〜おわりのはじまり〜
迎えた卒業式の日。
村山はゆめちゃんに公開プロポーズをしていた。
赤い薔薇の花束は108本。
明るいブルーのケースに入った一粒のダイヤの婚約指輪。
紺色のタキシードをビシッと着こなした村山。
女性であれば一度は夢見る完璧なプロポーズ。
幸せそうな笑みを浮かべているゆめちゃんを遠くから見守っていた。ゆめちゃんから優志とのことを告白されてからも、関係性が変わる事なく過ごしてきたけれど。プロポーズをされたのを、一緒に抱き合って喜べるほどの関係性は築けなかった。
当たり前と言えば、当たり前なのだが、それでも少し遠くの方からおめでとうと口パクで伝えることには成功して、ゆめちゃんもありがとうと返事をしてくれた。
優志とは、全くと言っていいほど、連絡をとってはいなかったけど、音楽界隈では活躍の場を増やしてきている様子で、遠くから想うと決めてから、もう一年が経った。4年生の1年間は、自分でもどう生活してきたのか不思議なくらい記憶があいまい。
わたしの生きる世界から、優志が居なくなってから、私の世界からは色が消えたように、全てがモノクロにみえた。それでも、優志と繋がっているピアノを弾いてる時だけは、世界に色がついたから前よりももっと、ピアノの世界へと没頭していた。
それでも、天音に尻を叩かれながら、なんとかとある商社の事務員として雇ってもらえることになった。無事に社会へでて、生きてはいけそうだ。
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