エピローグ 〜おわりのはじまり〜

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時々耳にする宮野優志の名前と声。画面越しから大衆に向けられた、その胡散臭い笑顔と笑い声。 そしてどんな時でも、いつも最後に告げるメッセージは日本語で「今日も月は綺麗ですか?」でしめて去って行く。そのメッセージの意味に、優志のファン達は憶測にモノを言わせて物議を交わしているようだ。 「月は綺麗ですか?の意訳は愛してます。だからあれは私たちファンに向けての言葉よ!!素敵すぎる」 「違うよ、誰か秘密の人への隠れた愛のメッセージよ」 「秘密の人ってだれよ」 「だって、この間好きな人は居ますかって質問に、離れた所にって答えてたじゃない」 そこまでSNSのやり取りを読んで私はそっと閉じてカバンにしまった。 ー離れた所にいる好きな人。 ー月は綺麗ですか? 去り際にみせる寂しげな表情に、私は勘違いしてしまいそうになる。まだ貴方は、私の事を想っていてくれるのですか? 「…ねぇ、優志。今でも月は綺麗だよ。けど伝えられないの、私は貴方の枷になりたくないから」 陽は高く登っていて月は見えないけど、私は空を見上げて呟いた。ざわざわと校門のほうがざわついてるのは、先ほどの村山の公開プロポーズのせいだとばかり思っていたが違っていたようで、袴姿の天音が走り慣れてない草履で、必死に叫びながらこちらへ向かってくる。 「ゆーめーかー!早く、早くきて!校門の所!」
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