エピローグ 〜おわりのはじまり〜

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理由は何一つ聞かされずに、手を掴まれて走り出す。天音の息は切れ切れで、いつもの走るよりも、急ぎ足程度の速さで歩いていくからいつもより校門の所へ着くのは遅くなる。 黄色い歓声に包まれている者が、誰なのか、誰が居るのか分からずに、ゆっくりと足を進める。私が近づいていくと囲まれている最後の人たちが、来たよと前の人の肩を叩いて道を開けられる。天音にも「ほら行ってきて。自分の気持ちに素直になりなよ」と送り出される。 そこでそこにいる人物が誰なのか予想がついた。私は足を進められなくて、その場に立ち止まったまま。目の前にいた人たちが次々と端へ避けていくのをただ見つめていた。 心の準備は追いついてなくて、私は視線を下げる。もし、もしも本当に、この先に優志がいるとしたら私はどんな顔をして会えばいい? サヨナラと告げずにさよならをしたのに。わざわざ遠回しに伝えたのに。まだ貴方を本当は愛してるなんて言えない。俯いていた私の目の前に腰を折って座ったと思われる優志の足先だけしかまだ見えない。 「……ゆめか。迎えにきたよ」 懐かしい優志の声に、私は思わず視線を上げて優志を真っ直ぐに見つめた。 「……優志。私、わたし、本当は」 「アイ、ノウ。何も言わずに受け取って。俺はずっと伝えてだろ?今でも、愛してるって」
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