天下統一。

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シコシコ、シコシコ。 「あっ、あっ」  クラスのマドンナ、黒林(くろばやし) 幸(さち)は授業中一番後ろの席に座っていた。  急に小さな変な声が聞こえたので、声のした方に首を微かに向ける。  すると、同じく一番後ろの席で隣に座っている、侍(さむらい) 統(おさむ)が汗を滴らせ、シコシコしているではないか。 「ちょ、ちょっと統くん。な、何しているの??」  幸は顔を赤面させて言った。  しかし、その声に気づく様子もなくシコシコしている。  しばらくして「ふうっ」という小さなため息が聞こえた。 「ああ、気持ち良かった」  統が顔を紅潮させて、満足そうに独り言を呟く。 「教室で、シコシコのうどんを作るなんてどうかしてるわよ! 統君」 「幸、我慢できなかったんだよ。許してくれよ」 「最低ー。見てるこっちが恥ずかしいわよ!」  幸はそう言うと統の頬を力いっぱいビンタした。  ビシッ!  教室にビンタの澄んだ音が響き渡る。 「そこ、何してるの!」  クラスの担任の女教師、鬼畜(きちく) 魔子(まこ)がその音に気づき近寄ってくる。 「まあ! 何をしてたのかと思ったら教室でシコシコうどんしていたの? 信じられない。アンビリバボーよ。不潔よあなた。校長ーー、校長ーー」  そう言って、鬼畜 魔子は「いやだわー」と言いながら廊下を駆け抜けて行った。  統は学校を退学させられた。  ちょうどその日、その学校の卒業生で有名歌手の、陳(ちん) 竹林(ちくりん)がテレビ取材に来ていてその騒ぎの一部始終を目撃していた。  そして、歌手でありながら美食家の陳 竹林は教室で作られてたシコシコうどんに目を輝かせた。 「食べたい、いや俺の権力で食べさせろ」  陳 竹林はシコシコうどんを無理やり取り上げた。  芳醇な香りを肺いっぱいに満たし、陳 竹林はズルズルっと勢い良くすすった。 「こ、これはまさにうどんのビックバンや」  陳は喜んで踊り狂い服を脱ぎ、捕まった。  統はその事件が元で評判が評判を呼び日本一の、いや世界一の、いや宇宙一の、うどん屋になりました。           
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