ヒッチハイク【恐い系】

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ハッと目が覚めた。反射的に携帯を見る。午前4時。辺りはうっすらと明るくなって来ている。 横を見ると、カズヤがいない。一瞬パニックになったら、俺の真後ろにカズヤは立っていた。 「何やってるんだ?」と聞く。 「起きたか…聞こえないか?」と、木の棒を持って何かを警戒している様子だった。 「何が…」 「シッ」 かすかに遠くの方で音が聞こえた。口笛だった。ミッ○ーマ○スのマーチの。 CDにも吹き込んでも良いくらいの、良く通る美音だ。 しかし、俺達にとっては、恐怖の音以外の何物でもなかった。 「あの大男の…」 「だよな」 「探してるんだよ、俺らを!!」 再び俺たちは、猛ダッシュで森の中へと駆け始めた。 辺りがやや明るくなったせいか、以前よりは周囲が良く見える。 躓いて転ぶ心配が減ったせいか、かなりの猛スピードで走った。 20分くらい走っただろうか。少し開けた場所に出た。今は使われていない駐車場の様だった。 街の景色が、木々越しにうっすらと見える。大分下ってこれたのだろうか。 「腹が痛い」とカズヤが言い出した。我慢が出来ないらしい。 古びた駐車場の隅に、古びたトイレがあった。 俺も多少もよおしてはいたのだが、大男がいつ追いついてくるかもしれないのに、個室に入る気にはなれなかった。 俺がトイレの外で目を光らせている隙に、カズヤが個室で用を足し始めた。 「紙はあるけどよ~ガピガピで、蚊とか張り付いてるよ…うぇっ。無いよりマシだけどよ~」 カズヤは文句を垂れながら、糞も垂れ始めた。 「なぁ…誰か泣いてるよな?」と、個室の中から大声でカズヤが言い出した。 「は?」 「いや、隣の女子トイレだと思うんだが…女の子が泣いてねぇか?」
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