ヒッチハイク【恐い系】

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男子トイレに誰かが入ってきた。声の様子からすると父だ。 「やぁ、気持ちが良いな。ハ~レルヤ!!ハ~レルヤ!!」と、どうやら小の方をしている様子だった。 その後すぐに、個室に入る音と足音が複数聞こえた。双子のオッサンだろうか。 最早、女の子の存在は完全にバレているはずだった。 女子トイレに入った母の、「紙が無い!」と言う声も聴こえた。 女の子はまだ泣きじゃくっている。 やがて父も双子のオッサン達(恐らく)も、トイレを出て行った様子だった。 おかしい。女の子に対しての、変態一家の対応が無い。 やがて母も出て行って、変態一家の話し声が遠くになっていった。 気づかないわけがない。現に女の子はまだ泣きじゃくっているのだ。 俺とカズヤが怪訝な顔をしていると、父の声が聞こえた。 「~を待つ、もうすぐ来るから」と言っていた。何を待つのかは聞き取れなかった。 どうやら双子のオッサンたちが、グズッている様子だった。 やがて平手打ちの様な男が聴こえ、恐らく双子のオッサンの泣き声が聴こえてきた。 悪夢だった。楽しかったはずのヒッチハイクの旅が、なぜこんな事に… 今まではあまりの突飛な展開に怯えるだけだったが、急にあの変態一家に対して怒りがこみ上げて来た。 「あのキャンピングカーをブンどって、山を降りる手もあるな。あのジジィどもをブン殴ってでも。  大男がいない今がチャンスじゃないのか?待ってるって、大男の事じゃないのか?」 カズヤが小声で言った。 しかし、俺は向こうが俺達に気がついてない以上、 このまま隠れて、奴らが通り過ぎるのを待つほうが得策に思えた。 女の子の事も気になる。奴らが去ったら、ドアを開けてでも確かめるつもりだった。 その旨をカズヤに伝えると、しぶしぶ頷いた。 それから15分程経った時。 「~ちゃん来たよ~!(聞き取れない)」 母の声がした。待っていた主が駐車場に到着したらしい。 何やら談笑している声が聞こえるが、良く聞き取れない。 再びトイレに向かってくる足音が聴こえて来た。
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