ヒッチハイク【恐い系】

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30分ほど、無言のままトラックは走っていた。 そして市街も近くなったと言う事で、最後にどうしても聞いておきたい事を、俺はドライバーに聞いてみた。 「あの、最初に乗せてもらった国道の近くに、山ありますよね?」 「あぁ、それが?」 「あそこで前に、何か事件とかあったりしました?」 「事件…?いやぁ聞かねぇなぁ…山つっても、3つくらい連なってるからなぁ、あの辺は。  あ~でも、あの辺の山で大分昔に、若い女が殺された事件があったとか…それくらいかぁ?  あとは、普通にイノシシの被害だな。怖いぜ、野生のイノシシは」 「女が殺されたところって」 「トイレすか?」 カズヤが俺の言葉に食い気味に入ってきた。 「あぁ、確かそう。何で知ってる?」 市街まで送ってもらった運転手に礼を言い、安心感からか、その日はホテルで爆睡した。 翌日~翌々日には、俺達は新幹線を乗り継いで地元に帰っていた。 なるべく思い出したくない、悪夢の様な出来事だったが、時々思い出してしまう。 あの一家は一体何だったのか?実在の変態一家なのか?幻なのか?この世の者ではないのか? あの山のトイレで確かに聞こえた、女の子の泣き叫ぶ声は何だったのか? ボロボロに朽ち果てたキャンピングカー、同じように朽ちた俺達のリュックは、一体何を意味するのか? 「おっ♪おっ♪おま○こ おま○こ 舐めたいなっ♪ペロペロ~ ペロペロ~」 先日の合コンが上手く行った、カズヤのテンションが上がっている。 たまに遊ぶ悪友の仲は今でも変わらない。 コイツの底抜けに明るい性格に、あの悪夢の様な旅の出来事が、いくらか気持ち的に助けられた気がする。 30にも手か届こうかとしている現在、俺達は無事に就職も出来(大分前ではあるが)、普通に暮らしている。 カズヤは、未だにキャンピングカーを見ると駄目らしい。 俺はあのミッ○ーマ○スのマーチがトラウマになっている。 チャンララン チャンララン チャンラランララン チャンララン チャンララン チャンラランララン♪ 先日の合コンの際も、女性陣の中に1人この携帯着信音の子がおり、心臓が縮み上がったモノだ。 今でもあの一家、とくに大男の口笛が夢に出てくる事がある。
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