勇者系【鬱話】

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勇者「さっき話したように、戦士は真っ先に魔物に突っ込んでいく事を選んだ」 勇者「なので、誰よりも身体に傷を負った」 勇者「誰よりも回復の魔法を受け、誰よりも回復の薬を使った」 勇者「結果、あいつは中毒になったんだよ」 姫様「……中毒?」 勇者「あー、馴染みないか。そりゃまあ、回復魔法もこの辺りの薬草も中毒性は低いしなあ」 勇者「中毒ってのは、それがないと駄目な状態と考えててくれ」 勇者「さてさて、皆さんはこれをご存知ですか?」ちゃぽん 王様「そのビンの中にあるのは一体?」 勇者「だよねー。見たことないよね。これは、魔王城近辺に生えてる特殊な薬草を煮出して凝縮させた、超回復薬だよ」 勇者「こいつは凄いよ。例えば、腕が吹っ飛んだとしても傷口から再生しちゃう。ボコボコーって。トカゲかってーのって感じ」 王様「そのような薬が……」 勇者「まあ、死んでさえなけりゃあこれで治るよ。……身体はね」 勇者「でも、精神はそうはいかない」 姫様「精神……?」 勇者「そう精神。心ともいうかな。そこがね、壊れてくるの」 勇者「この薬はよく効く反面、とても強いんだ。強くて強くて、心をズタボロにできるぐらいに」 勇者「一口飲むと、激しい高翌揚感で何でもできそうになる。実際、傷が治っちゃう訳だし」 勇者「でも、飲んで一時間後ぐらいかな。その辺りから副作用が出始める」 勇者「幻覚が見えてきたり、体の筋肉が弛緩したり、訳のわからないことを叫んだり、身体の中を虫が這いずり回ってるように感じたり」 勇者「そういう状態が半日ぐらい続くんだ」 勇者「だけど、半日もそうしてて魔物に襲われでもしたら一巻の終わりだ」 勇者「だから、こいつの副作用が出始めた頃に、精神を落ち着ける魔法をかけてもらうか、薄くした超回復薬をまた飲んでだましだましやっていく」 勇者「そんな事を続けていった結果、戦士はどうしようもないぐらいに心が壊れちゃった」
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