勇者系【鬱話】

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勇者「魔物を殺して薬を飲んで、魔物を食ってまた殺して。傷ついて癒してまた傷ついて」 勇者「戦士はさ、薬の副作用で髪の毛なんてぜーんぶ抜けちゃってさ」 勇者「まあ俺ほどとは言えないまでも、それなりにハンサムだった顔とかもどんどん変わっちゃってさ」 勇者「笑うと糸みたいになって、見てるこっちが笑っちゃうような目も、ぎょろぎょろしてギラギラしててさ」 勇者「俺に冗談を言っては豪快に笑ってた口も、半開きでよだれ垂らして、ずーっとブツブツ言ってるようになってさ」 勇者「武器も鎧も盾も兜も、魔物の血で常に真っ赤でさ」 勇者「どっちが魔物なのか、俺にはもうわからなかった」 姫様「…………」 勇者「でさ、魔王の直下にある四天王の一人を倒した時、腕も足も片目も吹っ飛んで、内臓なんかでろーっと見えてる状態であいつ言ったんだ」 勇者「『殺してくれ』ってさ」 勇者「当然、みんな断ったよ。魔法使いなんて、普段は戦士と喧嘩ばっかしてたのに、すげえ泣いてんの」 勇者「涙と自分の傷から出た血でべちゃべちゃな顔でさ」 勇者「『あたしを置いて行かないでくれ』とか『約束したじゃないか』とかさ」 勇者「そしたらさ、戦士ぷるぷる震えながら、目を糸目にして、少し困ったようにさ」 勇者「『ごめんな』って言ってさ」 勇者「あいつら、きっと両思いだったんじゃないかなあ」
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