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勇者「おっと、話が逸れた。駄目だね、思い出を話すと、紐づいて色んな思い出が溢れてくる」
勇者「でだ、集落での魔法使いは、お嬢様だとは思えない顔でゲタゲタ笑ってた」
勇者「とっくに狂ってたんだ」
勇者「そして、そんな彼女を見ても何も感じない俺も僧侶も」
勇者「とっくにみんな狂ってた」
勇者「血の海を見ながらゲタゲタ笑う魔法使いを他所に、俺達はのろのろと食料をあさってガツガツ貪り食った」
勇者「僧侶は泣いてた気もする。俺も泣いてたのかもしれない」
勇者「魔法使いも泣いてたのかもしれない」
勇者「まあそんなのはどうでもよくてですねー」
勇者「そんな事を繰り返してたある日の夜、俺達は凄いものを見たんだ」
勇者「どこまでも下へ続いてるような崖があってね。その場所を渡ると魔王の城までもう少しって場所だ」
勇者「そこでキャンプをしていたら、テントの外で魔法使いがキャーキャー叫んでた」
勇者「狂ったような声じゃなくてさ、歳相応の女の子が、綺麗な服を見て騒ぐような、あの暖かい感じで」
勇者「気になった俺と僧侶がテントから出ると、空一面で星が流れてた」
勇者「流星群っていうの? 偶然、見ることができたんだ」
勇者「つい数時間前まで、集落を潰して魔物の死体をザクザク切ったりして遊んでた魔法使いだけれど」
勇者「この時だけは子供みたいにさ。『すごいね』とか『綺麗』とか言っちゃってさ」
勇者「そんで、俺も僧侶もうなづいて、みんなで空をずっと眺めてた」
勇者「そしたら、魔法使いが言ったんだ」
勇者「『戦士にも見せたかったなー』って」
勇者「その辺の街中で、ふと言っちゃうような感じで。特別な感じでもなんでもなく言ったんだ」
勇者「次の日、魔法使いは居なくなってた」
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