ヒッチハイク【恐い系】

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「あの、ありがとうございます。もうここらで結構ですので…」 キャンピングカーが発車して15分も経たないうちに、カズヤが口を開いた。 しかし、父はしきりに俺達を引きとめ、母は「熊が出るから!今日と明日は!」と、意味不明な事を言っていた。 俺達は腰を浮かせ、「本当にもう結構です」としきりに訴えかけたが、 父は「せめて晩餐を食べていけ」と言って、降ろしてくれる気配はない。 夜中の2時にもなろうかと言う時に、晩餐も晩飯も無いだろうと思うのだが… 双子のオッサン達は、相変わらず無口で、今度は棒つきのペロペロキャンディを舐めている。 「これ、マジでヤバイだろ」と、カズヤが小声で囁いてきた。 俺は相槌を打った。しきりに父と母が話しかけてくるので、中々話せないのだ。 1度父の言葉が聞こえなかった時など、「聞こえたか!!」とえらい剣幕で怒鳴られた。 その時、双子のオッサンが同時にケタケタ笑い出し、俺達はいよいよヤバイと確信した。 キャンピングカーが国道を逸れて山道に入ろうとしたので、流石に俺達は立ち上がった。 「すみません、本当にここで。ありがとうございました」と運転席に駆け寄った。 父は延々と、「晩餐の用意が出来ているから」と言って聞こうとしない。 母も「素晴らしく美味しい晩餐だから、是非に」と引き止める。 俺らは小声で話し合った。いざとなったら逃げるぞ、と。 流石に走行中は危ないので、車が止まったら逃げよう、と。 やがてキャンピングカーは山道を30分ほど走り、小川がある開けた場所に停車した。 「着いたぞ」と父。 その時、キャンピングカーの1番後部のドア(俺達はトイレと思っていた)から、 「キャッキャッ」と、子供の様な笑い声が聞こえた。 まだ誰かが乗っていたか!?その事に心底ゾッとした。 「マモルもお腹すいたよねー」と母。 マモル…家族の中では、唯一マシな名前だ。幼い子供なのだろうか。 すると、今まで無口だった双子のオッサン達が口をそろえて、 「マモルは出したら、だぁ・あぁ・めぇ!!」と、ハモりながら叫んだ。 「そうね、マモルはお体が弱いからねー」と母。 「あーっはっはっはっ!!」といきなり爆笑する父。 「ヤバイ、こいつらヤバイ。  フルスロットル(カズヤは、イッてるヤツや危ないヤツを常日頃からそういう隠語で呼んでいた)」
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