勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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街に入るのを断られた。 泣きながら私たちに謝罪する勇者の言葉が胸に響く。 彼は悪くない。街の人々も悪くない。 悪くない悪くない悪くない悪くない。 あの泉まで戻るか、先に進むか。 この選択肢を間違えたら、私たちは死ぬのだろう。 どこか達観している自分がいた。 勇者は先へ進むことを選択した。 自分の身体が自分の身体と思えない。 脚が重い。空腹と喉の渇きが酷い。 この辺りの魔物は毒性が強く、食べられないようだ。 魔法使いが倒れた。 戦士が背負って進む。私たちは進む。 喉が乾いた。 水。 みず 商隊が通りがかった。 彼らは、食料を求める私たちに、城一つ買えるような金額を提示してきた。 きっと多分、彼らは魔物なのだろう。 魔物だ。これは魔物が持っていた食料なのだ。 魔物の血の匂いが身体から取れない。 神よ、我らを救い給え。
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