勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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魔物の商隊から奪った地図によると、近い街までどうにか行けそうだった。 今の私たちには、魔物の商隊が使っていた馬車もある。 これも神の思し召しか。 街の近くに馬車を停める。 馬車は魔物の血で汚れている為、余計な不安を与える必要もないだろう。 今夜はここで野宿だ。 商人の一団だと偽り、警備の兵へ僅かな金銭を与え、街へと入る事ができた。 今後はこうやって街や村へは入ることになるのだろう。 温かいベッドで眠り、美味しい食べ物を食べているのに、何故か涙が頬を伝う。 洗っても洗っても魔物の血の匂いが取れない。 魔法使いはずっと泣いている。 みんな眠れないのか、目の下のクマが酷い。 数日、街へ滞在を続けようと思う。 眠れないのもきっと今だけだ。 血の匂いが取れないのもきっと今だけだ。 忘れろ。忘れろ。忘れろ。忘れろ。 弱くてごめんなさい。 勇者が奇妙な葉巻を吸うようになっていた。 吸うとよく眠れるそうだ。 私も吸いたいと言うと、勇者が悲しそうな顔をしたのでやめておくことにした。 眠れないのは辛いが、彼に嫌われるのは耐えられない。 勇者が明るい顔で移動魔法を覚えたと言った。 これで食料と水の問題はかなり緩和される。 神は我らを見放してはいなかった。 悪夢は見るものの、どうにか眠れるようになってきた。 時間とは神の与えてくれた免罪符なのかもしれない。
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