勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

7/33
前へ
/251ページ
次へ
勇者が旅の再開をみんなに伝えた。 正直、気が進まない。だが、彼は勇者だ。私たちのリーダーだ。 戦士や魔法使いも不満はあったようだが、結局、明日出発することになった。 荷物をまとめ、出発の準備をしていた際、随分と荷物が減っていることに気付いた。 その減っている荷物の中に、勇者が大事にしていたいくつかの品が無いことにも気付いた。 彼に言うと、困ったような顔で「無くした」と呟いた。 ようやく私はわかった。 本当の商人でもない私達が、長期にわたって街に滞在するという事の現実を。 金銭は無限ではないことを。 次の街までの行程は順調に進んだ。 だが、私の心は重い。 勇者と戦士の間にも、以前のような気安い空気がなく、常に張り詰めた感じがする。 私たちは一体、何をやっているのだろう。 街へ到着し、宿で休んでいると勇者と戦士の部屋から怒号が響いた。 慌てて二人の部屋に向かうと、勇者と戦士が取っ組み合いの喧嘩をしていた。 魔法使いの身を案じる戦士と、先へ進むことを選択した勇者との間で意見が割れたためのようだ。 魔法使いと協力し、どうにか二人をなだめる。 勇者が外へ頭を冷やしに行った際、前の街で私が気付いたことを二人に話した。 魔法使いは気付いていたようだが、戦士は唖然とした表情をしていた。 これが不和を解く切っ掛けになればいいと心から思う。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

657人が本棚に入れています
本棚に追加