勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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次に目指すのは、乾燥地帯にある小さな村ということだ。 水を多めに携帯し、馬車へと保管する。 村へ向かう途中の道で、いくつかの遺体を見つけた。 どれもミイラ化しており、魔物に食べられたのか破損が激しい。 埃が酷く、口の中に常に砂利を入れられたような感触がする。 髪がざらつく。水浴びが恋しい。 しかし水の量は目減りしており、余裕など無い。 この地方の魔物は筋張ってはいるものの、食用としても問題ない種類が多い。 水に関しては、偶然にも水分を多く含む植物を見つけることが出来た為、次の村までは何とかなりそうだ。 村は壊滅していた。 壊滅した村を散策してみたところ、井戸が枯れた事が原因であるのがわかった。 水を奪い合い、日々を絶望で過ごす村人たちの心境を思うと胸が痛い。 此処へ来る途中で見つけたいくつかの遺体は、この村の人のものだったのかもしれない。 神よ、彼らに安らかなる眠りを。 勇者の移動魔法で前の街まで戻り、食料と水を補充して壊滅した村まで戻る。 村の中にあった移動魔法用の魔方陣に破損がなかったのは不幸中の幸いか。 移動魔法の使用は披露が激しいらしく、勇者の顔色が悪い。 今日はこの村で一晩明かすことになりそうだ。 比較的、綺麗な家を選んで泊まることにする。
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