勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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戦士が、村の中を物色する案を出した。 強盗と変わり無い行為を咎めようと思ったが、戦士の辛そうな顔を見ると言葉が出ない。 結局、全員で村を物色する事となった。 私が担当した家で、子供の描いた絵を見つけた。 私にはこれから先、神に祈る資格はないだろう。 次の街は、砂漠の中にある街だという。 小さいながらも王の収める街であるため、支援を受けられるかもしれないらしい。 だが、期待するのはやめておくことにする。 希望から絶望へたたき落とされるのはもう嫌だ。 砂漠へと差し掛かった。 ここを抜けるまでは、昼は穴を掘って休み、夜に移動する事になる。 水が生命線だ。無駄遣いしないようにしなくては。 日陰の中でも容赦なく太陽の光が私たちを焦がす。 水を少しでも節約し、体力を温存するために薬草を口に含んで噛み続ける。 苦いと思ったのは最初だけで、今はもう何も感じない。 ただ機械的に口を動かすだけだ。 体力の消耗が激しい。 砂漠の敵は夜行性のものが多く、危険度も高い。 腕の傷がじくじくと痛む。 疲労と油断を魔物に突かれた。 辛くも撃退には成功したが、魔法使いが死んでしまった。 蘇生のため戻るか、先へ進んで街で蘇生させるか。 勇者は進むことを選んだ。戦士は戻ることは選んだ。 私は……進むことを選んだ。
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