勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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お酒を初めて飲んだ。 とても不味い。だが、ふわふわとして色んなことを忘れられる。 勇者は部屋から出てこない。私も部屋から出ようと思わない。 誰か私たちを助けてください。 魔法使いが戻ってきた。 あれからどれぐらいの日が経ったのか、日付の感覚が曖昧だ。 魔法使いの頬はげっそりとこけ、一言もしゃべらない。 目だけが爛々と私を見つめていた。 魔法使いの回復を待っていたのか、全員、王に呼ばれた。 王から近場の遺跡に向かい、魔物の殲滅を命じられる。 数日の猶予を勇者が申し立てると、国で支払った魔法使いの蘇生の代金や、今の宿の代金などをたてに取られ翌日の出発を命じられる。 帰り際、王に私だけ呼び止められ、今後は王宮付きの司祭にならないかと誘われた。 王が私を司祭として求めていないことはわかっていた為、断った。 一刻も早く、この街を出たい。 街から出発して遺跡に向かう間、誰も口を開かない状態が続いた。 その道のりの間、私は思考を停止させ、魔物を倒し、傷付いた仲間を癒すことだけに集中する。 神へ祈り、誰かを癒す回復魔法を私がまだ使えるのが不思議でたまらない。 遺跡に到着した。 王からの依頼も完了した。 街へと戻ったが、何もする気が起きない。 ようやく気分が落ち着いてきた。 旅を続けた結果、私は強くなったのだろうか。弱くなったのだろうか。 あの日の事は明日にでもここに残そう。 吐き出さないと壊れてしまいそうだ。
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