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何処でも監視の目が光っている。
精神的な疲労が溜まり、常に身体がだるい。
勇者が街からの脱走を提案した。
これだけの監視の中、気付かれずに逃げる事は無理だという事はわかっている。
逃げれば罪人の烙印を押される事もわかっている。
それでも誰も反対しなかった。
どうせ、私達はとっくに罪人なのだから。
必要最低限の荷物をまとめ、深夜に逃げるように宿を飛び出した。
監視者に見つかったのか、すぐさま街中に鐘の音が響き渡る。
怒号と悲鳴が響き渡る中、私達は走り抜けた。
途中、家の中から怯えた目でこちらを見つめる、赤ん坊を抱いていた母親を目の端に捉えた。
きっと彼女は、自分の子を英雄にしようなどとは思わないはずだ。
どうかその子が、普通の人生を歩みますように。
食料も水も僅かしか持ち出せず、馬車も無い。
それなのに、どうしてこんなに晴れ晴れとした気分なのだろう。
この夜空がとても綺麗だからかもしれない。
今日は昨日よりよく眠れそうだ。
この国に長く留まるのは危険な為、隣国へと急ぐ。
隣国は海に近いと聞いて、思わず心が踊る。
おとぎ話に聞いた巨大な湖をこの目で見られるのだ。
海は、この身に溜まる罪を洗い流してくれるのだろうか。
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