勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

16/33
前へ
/251ページ
次へ
気がつくと勇者の背に背負われていた。 どうやら私は倒れたらしい。 ぽつりと勇者が「ごめんな」と言った。 弱い自分がまた嫌いでたまらない。 私に続いて、戦士と魔法使いが倒れた。 私たちはここまでか。 勇者が単独で村まで向かった。 動けない私たちは、山で見つけた小さな洞穴で彼を待つ。 夜が怖い。 指が震える。文字を書くのも辛い。 魔物の声が近い。 ここ数日の記録は後日残そうと思う。 一つ言えること。 今、私たちは生きている。 魔物の声が近いと記した後、私たちの匂いを嗅ぎつけたのか、狼のような魔物が数匹現れた。 どうにか撃退するも、戦士の傷は深い。 癒しの魔法を限界まで使い、気絶しては起きてまた使う。 出血が激しかったためか、戦士はしきりに寒いと言う。 夜、魔物が群れをなしてやってきた。 戦士は虫の息だ。 私も魔法使いも傷だらけ。戦士はいつ死んでもおかしくはない。 私が覚えているのはここまで。 勇者が戻ったのはそれから三日が過ぎてからだったという。 私たちの遺体は激しく損傷していたものの、蘇生に必要な1/2は残っていたらしい。 獲物を保存する習性を持っていた魔物に救われるとは、皮肉なものだ。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

657人が本棚に入れています
本棚に追加