勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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死ぬという事。蘇生するという事。 変わり果てた魔法使いの姿を見て理解していたつもりだった。 自分の認識が甘かったことを痛感させられた。 生き返ってからのことは思い出したくない。 勇者が辿り着いた村には、移動魔法用の魔方陣はあるものの、充分な施設はなかったらしい。 結果、私たちは今、故郷で静養している。 家族は私を見て一日中泣いた。 私はそんな家族を、遠いものに感じていた。 身体が動くようになって数日後、教会の孤児院で養っている子供たちが私のお見舞いに来てくれた。 今の私は彼らの目にどのように映っているのだろうか。 次の日、誰ともなしに勇者のもとへと集まった。 翌日、旅を再開することが決まった。 決して使命にかられてなんかではない。 知り合いの多いここにいるのは辛すぎるからだ。 家族には旅を再開することを告げなかった。 ただ、手紙だけは残しておく。 「ごめんなさい」 それだけを書いて。 移動先の村で宿を取り、久しぶりに4人で話した。 これまでのこと、これからのこと。 自分のこと、みんなのこと。 お酒を初めて美味しいと感じた。
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