勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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女王は様々な質問を返してきた。 冒険の旅が決して英雄譚などに語られる希望に満ちたものではないこと。 食料や水など、様々な問題が山済みであることなどを話すと、しきりに頷いては何かを記録していた。 目的がわからない分、不気味さを感じる。 翌日の謁見は私と魔法使いのみが呼ばれた。 相手は女性ではあるものの王であることに変わりはない。警戒を強くする。 なぜ女王は私たちの話を聞き、涙を流したのだろう。 しきりに私たちに謝る彼女に、私も魔法使いも困ってしまった。 ただ、不思議と悪い気持ちではなかった。 その日の夜、久しぶりに魔法使いと私は同じ部屋で語り明かした。 彼女と笑って話をしたのはいつ以来だろう。 奇妙な女王に感謝を。 早朝、兵に起こされ出国を命じられた。 理由を聞くも、私たちには知る権利は無いとだけ言われる。 少しでも信じた結果がこれだ。笑ってしまう。 まるで囚人のような扱いで、急き立てられるように船に押し込められた私たちの表情は、とても無機質なものだった。 海向こうの国まで2日ほどだと船長に言われた。 船員たちはどこか余所余所しく、私たちも進んでは話そうと思わない。 船酔いが辛い。陸が恋しい。 泣いている女王の夢を見た。 いつの日か、彼女の目的や涙の理由がわかる日がくるのだろうか。
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