勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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6つの大国の4番目。海向こうの国へ到着した。 船は私たちを降ろすと、別れの言葉もなく去っていった。 これを書いている今も気分が悪い。今日は早く眠ろう。 気分は優れないが、時間は待ってはくれない 早く荷物の整理をし、出発に備えなくては。 次の目的地は、この国の王がいるという街だ。 なんで彼女は何も言ってくれなかったんだろう。 後悔だけしか残らない。 荷物の整理をしていた際、見覚えのない手紙があった。 それは女王からの手紙で、そこには彼女の真実が記されていた。 彼女が誰よりも勇者に憧れ、冒険譚に胸を躍らせる少女であったこと。 現実の私たちを知り、自分の無知を恥じたこと。 自分の国が、民が大切であること。 隣国の砂漠の国が宣戦布告してきたこと。 おそらく、自分たちは勝てないであろうこと。 それでも民も、自分たちも立ち向かうことを。 最後にはこう書かれてあった。 『それでも、逃げない勇気をあなた達がくれた』 『あなた達の旅に幸あれ』 次の街までの旅が始まった。 次に出会う王はどんな人物なのだろう。 あの女王と懇意だったとあれば、人格者なのではないだろうか。 手紙と一緒に入っていた紹介状が役に立つと良いのだが。 魔物の強さが増して来ている。 更に、人形のものも増えてきた。 食料に余裕のある今はいい。だが、今後はどうなるのか。 考えるのが怖い。 街道の道すがら、壊れた馬車を見つけた。 壊れ具合を見るに、魔物ではなく野盗に襲われたようだ。 敵は魔物だけではない。 警戒のために二人一組で寝ずの番をする。 私と番をすることになった戦士がぽつりと言った。 『俺達は何のために戦っているのだろう』 私は答えられなかった。
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