勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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街が遠くに見えてきた。 今日中に辿りつけるだろう。 街にたどり着き、王女からの紹介状を渡した後、私たちは投獄された。 その際にこの手帳も没収されたため、その期間のことを今から記そうと思う。 投獄されてすぐ、勇者の尋問が始まった。 絶叫が響く中、隣の牢から魔法使いのすすり泣く声が聞こえる。 尋問を受ける。 何度殴られたかわからない。 私達は女王を騙してなどいない。 魔法使いの悲鳴がこだまする。 勇者と戦士のいる牢からはうめき声だけが聞こえる。 私も似たようなものだろう。 この日、私たちの死罪が決定した。 でっち上げられた罪状は、王族への詐称と戦争幇助。 怒り狂う王の顔が印象的だった。 王女と恋仲であった王の復讐。と聞けば綺麗なのかもしれない。 実際に王が叫んでいたのは、王女の国との交易による損害ばかりであったが。 これで尋問の日々が終わるのだと思うと、恐怖心よりも安堵の方が大きかったことを覚えている。 再度牢に入れられて三日目の深夜。 外の喧騒が大きくなったかと思うと、慌てた顔で兵が飛び込んできた。 どうやら魔物の襲撃があり、兵の数が足りないのだという。 荷物を受け取り、外へと出された後、回復魔法や薬による手当を受ける。 魔物の数は多く、街の損害は多大なものになった。 この中で私たちは多くの魔物を討ち取り、大罪人から一転して救国の勇者の扱いを受けることとなった。 そしてこの日、この国の王は逃亡し、その道中に魔物に襲われ死亡したとも伝えられた。 そして今、私たちは5つめの国を目指している。 途中で出会った旅の商人からうわさ話を聞いた。 あの国の王が死に、今後は内乱が続くであろうこと。 だが最早、私たちには関係の無いことだ。
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