勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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次の国は魔法が盛んと聞く。 魔法使いが少しだけはしゃいでるようにも見える。 滞在予定だった村は、魔物の手によって壊滅していた。 つんとした腐臭が立ち込める。 壊滅した後に野党にあさられたのか、目ぼしい物は何も残ってはいなかった。 予定を変更し、先にある街を目指す事にする。 魔物が集団で襲ってくる。 知性が高く、対処に戸惑う。 以前、砂漠で出会った魔物と同じように、言葉を理解する魔物がいた。 どうしても武器を振るう腕が鈍る。 自分の叫び声で目が覚める。 番をしていた勇者が悲しそうな目で私を見ていた。 きっとひどい顔をしていたのだろう。 食料が減ってきている。あれを食べるしか無いのか。 だがそれは人食いと何が違うのか。 見た目は干し肉だが、口に入れた瞬間にあの魔物の姿が目に浮かび戻してしまう。 水で無理やり飲み下す。 雨が降りだした。 冷たい雨が私たちの体温を容赦なく奪う。 勇者も戦士も魔法使いも、みんな白い顔をして震えている。 私も同じような顔をしているのだろう。 雨は止む気配すらない。 勇者が嫌な咳をしている。 勇者が高熱を出し、歩くことすらままならない。 馬車に寝かせてはいるが、碌な薬も無く、長時間の休養も出来ない。 悪化する一方だ。 雨はまだ振り続けている。 勇者の咳に赤いものが混じりだした。 移動魔法で戻る案も出たのだが、今の状態で使用すれば彼の命の危険すらある。 だが、このままでは死んでしまうだろう。 魔物が原因での死では無い場合、蘇生は不可能。次の街まで早くて三日。 決断を迫られる。
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