勇者系【鬱話】2【僧侶の日記】

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採取した魔物の体液を馬車に持っていった時、勇者は全て理解したようだった。 お願いだからそんな優しそうな目で私を見ないで。 毒を持つ体液を嚥下した後、血を吐いて動かなくなった彼を馬車に残し、私たちは進む。 雨音が私を責め続ける言葉のように聞こえた。 街はまだ見えない。 雨に氷が混ざってきている。 真っ白な雨が降り出した。 これが話しに聞く雪なのだろうか。 急激な冷え込みの為か、魔物の姿は少なく、動きも鈍い。 勇者がいないことを考慮し、出来る限り戦闘を避け、先を急ぐ。 遠くに街が見えた。 雪が積もり、予定よりかなり遅くなってしまった。 馬車の車輪が思うように進まない。 手足の赤切れが激しい痛みを伴う。 手足の感覚がなくなってきた。 雪の勢いが増し、見えていた街どころか少し前の景色すら見えない。 死がちらつく。 これしか無いのか。 本当にこうするしか無いのか。
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