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「いやあ、お前また自己記録更新したな。どうだ、今からでも陸上部入るか?」
教官が嬉しそうに笑いながら声をかけてくる。陸上部の顧問は部員獲得に余念がない。
カズミは笑顔で会釈をしてやりすごした。
しかし、正直なところ笑っていられるほど心に余裕はなかった。
(……危ないとろこだった)
冷や汗が背中をつたう。
カズミはいままで競えるものはなんだって一番だった。
成績だって上位をキープしているし、スポーツだって、厳しい訓練だって、誰にも負ける気がしなかった。
幼いころからならっていた中国武術で、去年の練武祭では初出場ながら優勝した。
みんなが私を知っている。
負けたらかっこつかない。
いや、勝ちにこだわる理由はそれだけじゃない。
「集合!」
教官の号令に生徒たちが一斉に集まり、きれいに整列していく。
カズミは険しい顔つきで、その列の中へ入って行った。
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