一日目

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手紙の文面から目を離し、天井に視線を移す。 『学年総合で一位、よかったね』 手紙の一文を思い出して、カズミは眉間にしわを寄せた。 (――当たり前だと思ってるくせに) こうして母が手紙をよこすときは、自分がいい成績をとったときだ。 少しでも悪いと、手紙どころか連絡すらまともにとれなくなってしまう。 言葉では「無理はせず」「あなたらしく」と気づかってはいても、この家の人間は“結果”に対してとてもシビアだ。 カズミはそんな親の意向に添うよう、これまで何だってトップをとろうとしてきた。 一位は最高の結果ではなくて、評価されるために必要な最低限の条件のように思える。 これまではどうにかなった。でもこれからはどうだろう……? 正直、こういう生活はすごく疲れる。 そして、疲れが限界まで溜まると、ふと、考えてしまう。 (もし私が2番になったらどうなるのだろう。いや、それ以下になったら?) 家族は私に失望するだろうか。見放されて、相手にもされなくなってしまうのではないか? ……いや、そんなこと考えちゃいけない。 少しでも気を抜けば、今の地位は一瞬にして崩れ去ってしまう。 弱気になったらダメだ。
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