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「好きなのです。祠さまが。優しくて、その後哀しくなるのです」
いつか、私はいなくなるから。
それがとてつもなく、どうしようもなく、哀しい。
僕は背中に刺さる矢を引き抜こうとしたが、やめた。
「天。きみは僕なんかを何故守ろうとした」
ぼんやりと立つ僕に気配を察した天が笑う。
心からの、笑み。
「そうしたら、哀しくならないかな、と」
唇から血が垂れる。
天に気を与えることで徐々に弱まり、顕現が難しくなった。
だから、僕が血を拭うことができない。
袂(たもと)で血を叩くようにして染み込ませた天が祠に頭を乗せて、寝転がる。
「身体が、何故か重たくて。すみません。祠さま」
瞼を下ろす天の額に掛かる髪を払った。
実際には透けて天には触れることすら叶わなかったが。
「あぁ、そうだ。祠さまの名を考えてきました。綺麗なものを」
「…………」
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