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きみに最初に会ったのは古い時代。
きみは小さかった。恋も知らない幼さだ。
はっと祠に憑く僕は目覚めた。
時が経ち憑いてる意味も理由も忘れていた。
ただ、思い出すのは、
「夏の夜に会いましょう、宵(よい)」
だけ。
周りの人間は半裸で岩や土を運んでいた。
「偉いさんのお墓」
と、ぶつぶつ呟いていた。
祠は足蹴にされてぼろぼろになっていた。可哀想に。
祀られるのに僕は石を戻したりしながら世話をしていた。その時だ。
「祠さま。祠さま」
幼気(いたいけ)な声が掛かった。
僕は咄嗟に祠の中に隠れた。
髪を結い上げ、ぼろ布を纏う幼子がふくふくした両手を合わせていた。
ぷくっとした顔に真剣味を宿した女の子が高い声音で言った。
「お願いがございます」
祠の中で僕は密かにため息をついていた。
僕が神様か何かも分からないのに願いなど叶えられない。
叶える力さえあるか分からないからだ。
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