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幼子は黒髪に黒い瞳できらきらしていた。
眩しかった。とてつもなく。
「ききん、というのを止めてほしいのです」
――ききん?飢饉か。
沢山人が死んでいた。過酷な労働故(ゆえ)だろう。
「祠さまは神さまなのでしょう?お願いします。止めて下さい。妹が死んでしまいます」
必死に言い募る幼子の言の葉(ことのは)。
『妹』。飢饉に襲われ病に蝕まれた(むしばまれた)妹を助けたいと言う。
少しだけ、心を動かされた。
僕には欲しくても手に入られない存在、妹。
それを助けて欲しいと祠に来た。
祠の周りには供えられているであろう水を求めた亡者どもが死に絶えているのに。
無論、がたついた祠に水なぞ供されないが。
己が病に掛かる可能性があるというのに、だ。
『……そこの、幼子』
声を掛けた。不憫と同情と、……幼子の覚悟に少しばかりの愁嘆(しゅうたん)を込めて。
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