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ふわりと青白い青年に顕現(けんげん)して手招きする。
素直な幼子はにじりよる。
その瞳は希望に輝いていた。
「祠さま、叶えて下さるのですか?」
がたついた祠に腰掛けて幼子を見下す。
中々に綺麗な整った顔をしている。年月が経てば美しくなるだろう。
しかも、かなりの霊気を感じる。
質としては逸材だ。
惜しい、と思った。これほどの美貌と力を亡くすのは惜しい、と。
しかし、僕には飢饉を雨を降らし豊作には出来ない。
『小さな子供。僕は出来やしない』
小さな顔に、明らかな落胆が見えた。
慌てて言い添える。
『しかしだ、人の子。力を強化することはできるのだ』
「むむ?」
首を傾げる仕草をした幼子の頭をぽん、と叩いた。
『お前の力を強化する。飢饉は勿論、妹の病も癒す』
「……?」
未だに理解不能の幼子に訊く。
『人の子。名は』
にっこり笑って、幼子が答えた。
「天(そら)と申します」
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