3人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は笑って、幼子の額に手を当てた。
「では、天。僕の力を分けようか」
光がほわり、と生まれて天の額で溶けた。
飢餓(きが)に苦しんでいるはずの頬が仄かな赤みを帯びた。
苦しげだった息遣いが柔らかくなる。
「苦しく、ない…?」
普通なら夥しい(おびただしい)量の気に変調をきたすものなのに瞬く間に融合した。
大したものだ。
内心感心しながら天に言う。
「与えた力はこの地の気。木々を生やし、恵みの雨を降らす」
「……ということは?」
ちっとも理解していない天に僕は苦笑した。
「祈れば全てが上手くいくはずだ」
ぱっと顔が華やいだ。
それから、目の前で綺麗に転んだ。
「……………」
無言でむくりと起き上がる天。
「……………いたい」
「まぁ、なあ」
頷く僕に顔を歪める天は「ありがとうございました、祠さま!」と言って駆けていった。
――雨が、降ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!