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天が雨を降らしてから何かが、変わった。
穀物は豊作、動物も徐々に増えていき、生活は満ち足りた。
成長し大人びた相貌の天は神と崇められた。
そう、全てが満足した人生。
そんな気分になった。
祠の前は相変わらず薄暗く、寒く、ぼろぼろだった。
ただ、従者を振り切った天だけが通い詰め、手を合わせた。
ある日、彼女は上質の衣を纏ってきた。
何時も(いつも)は好んで単色の質素な衣を纏っていたのに。
「祠さま。私はどうすればよろしいのでしょうか」
静かに正座をして呟く天に、僕は顕現して問うた。
「天。きみは何時もより、何かが違う」
二十歳を越えてもまだ小さな天は俯いた。
「あぁ、私は怖いのです」と小さく呟かれた。
「雨乞いの次は虫害を抑えて欲しい、冷害も――と願いが限りないのです、祠さま」
「きみは、その力があるだろう」
「あぁ、だめなのです。最初は叶えていましたが、きりがなく――」
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