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「私は孤独です」と呟いたきり天とは会っていない。
天が訪れないのだ。
祠のがたつく扉を直しつつ何回も夜を越えた。
秋が過ぎ、冬が過ぎ、春が過ぎ、そして。
――夏がきた。
「祠さま」
変わらぬ声に僕は振り返った。
辺りは闇夜だった。
明るく、悲しい太陽が沈んでいった。
夏の、夜だった。
「そら」
僕は顕現(けんげん)しふらつく天の腕をとる。
薄桃の唇の端から真っ赤な血が零れて(こぼれて)いた。
倒れ込んだ天が、笑った。
嘘の笑み。
「矢で、射られたのです。結局、妹を若返らすことが出来ずに」
「……できるわけが、なかろう」
最後に王者は志す(こころざす)。
――不老不死を。
「役立たずなのです。妹は了承しなくば祠を壊し、祀られている御霊(みたま)を踏み潰すと、言いました。だから」
「了承したのか」
頷く天。御霊は僕のこと。つまりは、僕を引き合いに出されて了承したのだ、天は。
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