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「少しは配慮しろよな。俺、あんまり金持ってないんだぞ」
「あらそうなの。というか、あなた一体何の仕事をしているの?」
「だから勇者だろ」
「……勇者、というのはあなたや、あなたより前にわたしを倒そうとして城に乗り込んできた5人のような戦士のことよね」
「ああ。“魔を統べる者”が世界に放った“魔”が魔物を生み出してるわけだから、その根元である“魔を統べる者”を倒せば魔物はいなくなるだろっつー考えで“魔女”を倒すことを目的に旅をする戦士が勇者だ」
つまりアマルティアを倒す気の無かった俺は厳密には勇者ではないのだ。
「つーかティア。話の内容に気を付けろよ」
今の彼女の口振りでは、ティアの住む城に勇者が乗り込んだことになる。つまりティアが“魔女”アマルティアであるということが周囲に知れてしまう可能性があるのだ。
“ティア”は“アマルティア”と別人として扱ってもらいたいものだ。
「あなたの発言も大概(タイガイ)よティモリア」
お互い様だろ、とでも言いたそうなジト目を俺に向けるアマルティア。
「それでその勇者は具体的に何をして収入を得ているの?」
答えづらい質問だ。俺は先程仕事は何だと訊かれて勇者と答えたが、そもそも勇者は職業とは言い難い。つまり収入源は人によって異なるのだ。
「どう言えばいいかな。俺は魔物を倒して入手できる素材とか旅の途中で手に入れた鉱物や薬草を売ったり、簡易的な株で金儲けてたけど……他の勇者とは面識ねぇしわかんない」
「株……? あなたが?」
失礼なほど怪訝そうな表情のアマルティア。
「なんだよ、俺が株取引やってたらおかしいのかよ」
「株ができるように見えないから不審に思うのよ」
「おいおい、どういうことだよ?」
「あなたは単なるバカにしか見えないのよ、ティモリア」
何つー言いぐさだコノヤロウ。ホットケーキ食わせてやらんぞ。
「……あ」
ホットケーキで思い出した。
「何よ」
「ここじゃなくて専門店のホットケーキ食ってみるか?」
この国はメイプルシロップで有名なスフェンダミ王国。当然この食堂のメニューにもホットケーキはあるが、スフェンダミのメイプルシロップを最高に引き立てる最高のホットケーキを提供してくれる店がこの街ロトスにあるのだ。
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