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「お前さっき自分でホットケーキは明日にするって言ってたろ」
「それは専門店のホットケーキの話じゃない。ここのホットケーキも食べるわよ?」
なんて食い意地の張った“魔女”なんだ。
「あのさティア?」
「何よ」
「俺、金無いんだけど」
「…………………………」
アマルティアからの視線が突き刺さる。
情け無いことだが金欠勇者にとってこれ以上の出費は死を意味しているので俺は必死にアマルティアを説得した。幸い、今手元には売れば良い値になるユニコーンの角があるので明日になれば金は作れる。今だけ少し我慢してほしいと言うとアマルティアはしぶしぶホットケーキを諦めたが、代わりに明日行くホットケーキ専門店でいちばん高価なメニューを頼むことが条件となった。金欠でなければその程度はおやすいご用だ。
翌日。
「ティモリア、これはどういうことなの?」
「俺に訊かれてもな……」
ホットケーキ専門店、ホワイトメイプル店内でアマルティアは額に青筋を浮かせていた。ユニコーンの角を売却しホワイトメイプルまで赴いた(オモムイタ)はいいが、トラブルが発生したのだ。
「ああ、なんてこと! 待ちに待った専門店のホットケーキが食べられないなんて!」
うー! と子供がだだをこねるような声を出すアマルティア。
厳密に言えば、食べられないのはアマルティアの注文したロイヤルシロップホットケーキというメニューだけだから、食べようと思えばホットケーキは食べられる。しかし、アマルティアはどうしてもこの店でいちばん高額なこのロイヤルシロップホットケーキを食べたいというのだ。
「ごめんね。ロイヤルシロップが無いとどうしてもこのホットケーキは作れないの」
ホワイトメイプルの店員の若い娘が申し訳なさそうに謝る。
「あ……。い、いえ、気にしなくていいわ。これは、そのっ……わたしのわがままだもの」
店員の存在を今更思い出したのか、アマルティアの態度が急変する。ここでも人見知りが発動したのか。
それにしても困った。ロイヤルシロップホットケーキが食べられない理由はロイヤルシロップという最高級のメイプルシロップが無いからだ。 その原因が単なる在庫切れなら日を改めてまたここに来ればいいのだが、あいにく原因は単純な在庫切れではないのだ。
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