第2章 メイプルシロップの国

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この店にロイヤルシロップが届く前に奪われてしまったのだ。 この店で使うロイヤルシロップは王家の森という森のカエデから取られ、森の中の店で瓶詰めにされてからスフェンダミ全国に出荷されるもの。全国各地にシロップを運ぶ馬車が襲われ、その際にロイヤルシロップを強奪されてしまったというのだ。 いくつもの馬車が同じ被害に遭っていることから、犯行は何かしらの犯罪組織によるものであるというのがスフェンダミ王国軍警察部の見解だという話である。 「くっ、ティモリア! 王家の森に行くわよ!」 「歩いて2週間かかるんですけど……」 「関係ないわ! わたしからロイヤルシロップホットケーキを奪った罪は重いのよ」 罪は重いのよって、お前は名前がアマルティア(罪)だろうが。 食べ物の恨みは恐ろしい。 結局アマルティアは犯人を捕まえると言って聞かず、俺達2人はロトスから徒歩2週間という距離を移動して王家の森へ行くことになった。 「さあ行くわよティモリア。……どっち?」 「北だからこっちだ。だけどアマルティア、出発は3日後にしようぜ」 「なぜよ?」 「今日の朝に連絡が来たんだけど、明後日ダルディムの葬儀があるから。俺出席するし」 「あ……そうね。なら仕方ないわ」 とりあえず宿に戻ることになり、俺とアマルティアは昔ながらの石造りのロトスの街を歩き出した。最近では魔法を使った照明が使われていたり、石材を魔法でヤスリがけして完全な直線で出来た建物が多いが、ロトスのように古い街は違う。年季の入ったランプに表面がごつごつした建造物や道路。さすがに雨漏り対策として防水の魔法などは使われているが、見た目はかなり古めかしい。こういった街の方が落ち着くといってわざわざロトスに引っ越してくる人もいるというから驚きだ。 「それにしても、今日と明日はヒマになってしまったわね。どうしようかしら」 「この街をいろいろ見て回るってのは? ついでにそこら辺の店のホットケーキでも食べるか?」 「観光ということかしら? 良いわね。ホットケーキは……。いえ、いらないわ。ここまで来たらロイヤルシロップホットケーキだけを食べるわ」 ここまで来たらの意味が分からないが、とりあえずホットケーキは食べないそうだ。
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