第2章 メイプルシロップの国

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「近くに服屋があるからそこに行こうぜ」 「ええ」 簡単に話はまとまり、俺とアマルティアは服屋へと向かう道を歩き始めた。 「ねえ、聞いた奥さん? あの2人のケンカ」 「ええ聞きましたとも。着替えも持たせずに連れ出すなんて……」 「不潔ね、あの銀髪の男は」 背後でヒソヒソと話をする住人達に気付くことなく。 「それでどんな服を買ってくれるのかしら」 意気揚々としたアマルティアの声。 「え、俺が選ぶのか?」 対して素っ頓狂(スットンキョウ)な俺の声。 「選んでくれないの?」 「選んで欲しいのかよ?」 「質問に質問で返さないで」 「…………」 もしかするとアマルティアは単に服を買いにいくだけなのにデートか何かと勘違いしているのかもしれない。 「分かった。選んでやるから文句言うなよ」 「保証はできないわ。文句を言われるのが嫌なら、わたし好みの可愛い服を選びなさい」 なんでこいつこんなに偉そうなんだろう。 服屋は意外と近く、数分で到着した。実は服がそのまま服の形で売られている店は思いのほか少ない。本来は布屋で購入した布を使って自分で服を作ったり、仕立屋で仕立ててもらったりするのだ。 「これなんてどうだ?」 と俺がアマルティアに見せたのは紺色のワンピース。さすがに普段着がドレスというのは目立ちすぎるから却下だが、アマルティアも女だ。3日後から徒歩の旅とはいえお洒落をしたいだろう。 「ワンピースというのは良いけど、それじゃ地味じゃないかしら」 「ごもっともだけど、これから街を出るってことを考えてくれよ。派手な装飾がついてたら動きづらいだろ。それに紺色なら汚れも目立たないし」 王家の森までの道中、魔物による襲撃は多々あるだろう。無駄にヒラヒラな服や丈の長すぎるスカートでは転倒する可能性もあり危険だ。 「実用性を考えてくれるのはありがたいけど、さすがにこれは嫌よ」 「む、そうか。となるとあれはどうだ?」 俺が指さした黄色い服を見て、アマルティアはまたも首を横に振る。 「わたしの趣味じゃないわね。緑とか黄色は好きじゃないのよ」 「やっぱり黒が好きなのか?」 「そうね。黒も好きだし、白も好きよ。でもピンクや水色も捨てがたいわ」
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