第2章 メイプルシロップの国

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とりあえずその辺の色から選べばいいのか。というかアマルティアの好みの色の中で汚れが目立たないのは黒だけだ。 「でもティモリア? 魔物との戦闘で服が汚れることは無いと思わない?」 「なんでだよ?」 「わたしもティモリアも恐ろしく強いからに決まってるじゃない。それにわたしは魔法主体なのよ?」 確かに勇者と“魔女”が組んだら敵無しだ。それに魔法主体ということはあまり激しい動きをしないことを意味している。いや、本来であれば魔導師でも戦闘となればわりとアクティブに行動するものだが、アマルティアは規格外の強さなので動く必要が無いのだ。 実際俺もアマルティアの魔法攻撃の雨嵐にはビビった。戦闘中何度死を覚悟したことか。 「魔物と戦わなくても汚れはつくんでしょうけど、それなら何着か服をまとめて持っていればいいのよ。それに私の魔法で洗濯できるわ」 アマルティアが日常生活用の魔法を使えるとは意外だ。いや、“魔女”と呼ばれるほど魔法に長けているのだ。そのくらいは当たり前かも知れないな。 「というわけでもっと可愛いのを選んでほしいわ」 「可愛い服、な。やっぱヒラヒラしたヤツがいいのか?」 「もちろんよ。そっちの方が可愛いじゃない」 無邪気な笑顔。やはり、どこからどう見てもただの少女だ。 純粋で純真で無垢で可憐でどこか子供っぽい。 そんなアマルティアの笑顔は魅力的だった。 「なあティア、これどーよ?」 「あら、可愛いわね。ティモリア、わたしこれがいいわ」 俺はこの笑顔を誰にも消させやしない。アマルティアの死以外の方法でこの世界から“魔”を消し去ってみせる。 「あ、こっちの方が似合うかもな。白いしヒラヒラだし」 「これは嫌よ。古くさいわ」 「マジかよ……。俺のセンスって……」 “魔を統べる者”は、アマルティアは本質的には悪ではない。“魔を統べる者”だなんて呼ばれてはいるが、実際にはアマルティアの意志とは関係無く“魔”は世界に拡散し続けている。しかし、この世界でそれを知る者は少ない。 「その後ろの黒い服は?」 「後ろ? どれよ?」 「これこれ。良いだろ」 「ええ。最高ね」
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